コーヒーの味わいを左右する要素の一つが、お湯の温度です。湯温によってコーヒーの苦味や酸味のバランスが変化します。この記事では、自宅でコーヒーを淹れる時に自分好みのベストな美味しさを引き出せるよう、コーヒーを淹れるのに最適とされる湯温や飲み頃、コーヒーの温度と深くかかわるコーヒーカップの選び方を解説します。
Index
1.ホットコーヒーとお湯の温度
コーヒーを淹れる時のお湯の温度は、コーヒーの味わいに深くかかわる大切な要素です。ここでは、ホットコーヒーをドリップで淹れる最適の湯温と飲み頃の温度を紹介します。
ホットコーヒーをドリップで淹れる最適の湯温
ホットコーヒーをハンドドリップで淹れる際には、沸騰した熱々のお湯ではなく、ほんの少し冷ましたお湯を使用します。一般に最適な湯温とされるのは、90~95℃です。これは、コーヒーが持つ特有の苦味や酸味、甘味などが最も良いバランスで抽出されるためとされています。
ただし、焙煎の仕方や挽目の細かさで適温は異なるので、いろいろと試して自分好みの温度を探ると良いでしょう。
お湯の温度を測るには、温度計がついたコーヒーケトルなどを使用すると便利です。ない場合は、水が沸騰した時に発生するぼこぼことした気泡で測ります。気泡が落ち着いた頃が淹れるタイミングです。
ホットコーヒーの飲み頃の温度
自宅でコーヒーを淹れて飲む時、熱すぎてやけどしそうになったことはないでしょうか。90~95℃がドリップで淹れる適温とされますが、飲む時は少し冷ました約68~70℃が美味しい飲み頃です。
また、ホットコーヒーを美味しく飲むための温度は60℃までとされています。冷めすぎてしまうと、せっかくのホットコーヒーの美味しさを損なうので注意してください。
テーブルに運ばれたコーヒーに、ミルクや砂糖をくわえたり、飲むまでに時間がかかる可能性がありますので、80℃前後でテーブルに出すようにしましょう。
2.アイスコーヒーとお湯の温度
アイスコーヒーでも、コーヒーそのもののドリップ方法はホットコーヒーと同じです。ここでは、アイスコーヒーを淹れる最適の湯温と飲み頃の温度を紹介します。
アイスコーヒーを淹れる最適の湯温
ハンドドリップのコーヒーからアイスコーヒーを作る場合、氷を入れて急冷する方法が一般的です。まずホットコーヒーを淹れますが、湯温は先に紹介した90~95℃が適しています。ドリップしたホットコーヒーを急冷することにより、透明度が高く爽やかな味わいのアイスコーヒーができあがります。
アイスコーヒー作りの場合もドリップ方法は一緒ですが、コーヒー豆の選び方がポイントです。冷めてもコーヒーらしいコクをしっかりと感じられるよう、深煎りのコーヒー豆が適しています。
アイスコーヒーの飲み頃の温度
アイスコーヒーの飲み頃の温度は約4~6℃とされています。飲む間に少しずつぬるくなる可能性があるので、約2~4℃でテーブルに出すと良いでしょう。
冷蔵庫の温度は、JISが決めた規格で0~10℃に温度設定できるようになっています。冷蔵しておく場合は、他の保管食材との兼ね合いにもよりますが、温度が高くなりすぎないようにしてください。
3.お湯の温度によるコーヒーの味の変化
湯温によってコーヒーの味わいが変わるのは、コーヒー抽出のメカニズムが関係しているからです。ここでは、抽出とコーヒーの味の変化や湯温による味の違いを説明します。
抽出温度とコーヒーの味の変化
お湯の温度によってコーヒーの味わいが変化するのは、湯温がコーヒー粉の中の成分移動と深くかかわっているためです。
酸味や苦味などのコーヒーの成分は、お湯が浸透するに従って粉の内部から外部へと向かって移動し、お湯へ溶け出して最終的にろ過されます。成分のうち酸味は移動速度が早く、あまり湯温の影響を受けません。
一方、苦みはお湯の温度やお湯との接触時間の影響を受けやすい成分です。苦味成分の移動速度は早いものから遅いものまでさまざまであり、遅いものほど渋味を伴い、湯温や接触時間の影響を受けやすいとされます。
抽出温度が高いほど、成分の移動量が多くなります。そのため、湯温が高すぎると成分の移動が早すぎて、不要な雑味まで抽出されてしまうのです。
高い湯温で淹れた味
高い湯温で淹れると、低い湯温に比べて苦味がしっかりと出ます。高い湯温で淹れると全体の成分移動量が多くなり、すばやく抽出されやすい酸味と同じように苦味もしっかりと抽出されるためです。先ほど紹介したとおり、不要な雑味も一緒に出てしまう場合があります。
低い湯温で淹れた味
低い湯温で淹れた場合は、酸味を感じやすくなります。低い湯温で淹れると、全体的に成分移動に時間がかかります。特に移動に時間を要する苦味成分が抽出されにくくなり、湯温の影響を受けにくい酸味はしっかりと抽出されるので、酸味が感じやすくなるからです。きりっとした酸味を好み、こだわって低温で淹れるコーヒー愛好家もいます。
4.コーヒーの温度変化とカップ
コーヒーの温度の変化は、コーヒーを注ぐカップからも影響を受けます。ここでは、コーヒーの温度変化とコーヒーカップの関係について説明します。
コーヒーカップのサイズ
容量約120~140mlの一般的なサイズだけでなく、エスプレッソを飲む時に使用するデミタスカップや大容量のマグカップなど、コーヒーカップには多種多様なサイズがあります。
例えば、ゆっくりと時間をかけて飲むことを想定したマグカップは、低い温度で淹れると飲んでいる間にぬるくなってしまう可能性があります。また、パンを浸して食べることを想定したカフェオレボウルは、取っ手がないので熱すぎると持つのが難しいかもしれません。
カップは、コーヒーの量や目的、ライフスタイルなどに合わせて選びましょう。
コーヒーカップの素材
サイズだけでなく、素材もコーヒーカップ選びのポイントです。コーヒーを美味しくいただくためには、冷めにくいものを選ぶと良いでしょう。よく見られる素材とその特長を紹介します。
陶器:厚みがあるのでコーヒーが冷めにくい。触り心地からぬくもりや独特の風合いを楽しめる。
磁器:一般的に使用されている。きれいな白色が特長。伝熱性が高いので、冷えたカップにコーヒーを注ぐと熱を奪う場合がある。
ガラス:ぬるくなりやすいが、おしゃれなデザインが多い。透明なのでコーヒーの色合いが目でも楽しめる。
ホーロー:保温性と保冷性のどちらにも優れ、かつ軽い素材。コーヒーが冷めにくい。
コーヒーカップの形状
味わいだけでなく、香りにも影響するのがカップの形状です。コーヒーを飲む時は、底から縁に向かってまっすぐ立ち上がっている、もしくは中央部分が丸く膨らみ縁でまた狭くなる形状のカップがおすすめ。お湯と空気が接する部分が少なく、コーヒーが冷めにくいためです。
底から縁に向かって広がっていく形状のカップが多く販売されていますが、空気に接する部分が多いので比較的冷めやすく、紅茶向きです。紅茶は約100℃の熱いお湯で淹れると美味しいとされるため、多少、冷めるほうが飲むのに適します。
さらに、カップの厚みも一緒にチェックしましょう。薄いと酸味がより感じられてクリアな味わい、厚いと苦味がより感じられて濃厚な味わいです。
5.お湯の温度にこだわって美味しいコーヒーを淹れよう
コーヒーの美味しさを変えるお湯の温度。コーヒー豆の種類や挽き方の他にも、自分好みの味を追求するトリガーになります。例えば、沸騰したお湯を何分おいてから淹れると最も美味しいと感じるか、コーヒーカップの素材はどれが好みかなど、いろいろと試して自分好みの味を見つけてくださいね。