北欧とはデンマーク・スウェーデン・ノルウェー・フィンランド・アイスランドの5国を指します。この5国はコーヒー消費量が非常に多く、コーヒー文化が強く根付いていることでも有名です。また、コーヒーのイベントが活発な点も特長的。この記事では、北欧コーヒーの文化や歴史、味わいについて紹介します。
1.北欧のコーヒー事情
北欧はコーヒー消費大国と言われるほど、消費量が多い地域です。コーヒー文化が古くから強く根付いているため、コーヒーへの親しみが深いと言えます。まずは、北欧のコーヒー消費量や文化、歴史について見ていきましょう。
北欧とは
ヨーロッパの北部のことを北欧と呼びます。主にデンマーク・スウェーデン・ノルウェー・フィンランド・アイスランドの5ヵ国を指し、英語では、Nordic countries(ノルディックカントリー)と総称されます。この5ヵ国は、第二次世界大戦後に北欧諸国が団結するために作られた理事会に加盟しており、政治的に深いつながりがある5ヵ国としても有名です。
北欧のコーヒー消費量
北欧のコーヒー消費量は、世界一と言われています。国際コーヒー機関のICOが発表したデータによると、2013年度の1人あたりのコーヒー消費量はフィンランドが12kg、ノルウェーが8.70kg、デンマークが8.60kg、スウェーデンは7.31kg。日本の消費量は3.36kgなので、圧倒的に多いと言えるでしょう。最も消費量の多いフィンランドに至っては約3倍となっている点からも、北欧の人々がコーヒーを非常に好むことが推し量れます。
北欧のコーヒーの歴史
北欧にコーヒーが伝わったのは、1700年代までさかのぼります。コーヒーが伝わってから人々の間に広まる速さは、爆発的なものでした。あまりにも流行したため、1740年代のスウェーデンでは、コーヒーとお茶に対して過剰な飲用を禁止する国王布告が出されるといった事態が起こります。その翌年には消費税が課せられ、1756年にはついにコーヒーの飲用が禁止になりました。コーヒーの流行が、支配者層の反感を買ってしまったのです。北欧の人々のコーヒー愛が伝わる歴史と言えるでしょう。
また、北欧の先住民族であるサーミ人もコーヒーを非常に好みました。コーヒーにチーズを入れたカフェオストと呼ばれる飲み物は、古くから存在するサーミ人のコーヒー文化として有名です。
北欧各国のコーヒー文化
北欧には、コーヒーを飲む習慣が古くから根付いています。例えば、デンマークのヒュッゲです。ヒュッゲとは、くつろぎという意味。友人や家族とともに、カフェや自宅でコーヒーを楽しむことを指します。デンマーク発祥のおやつである、デニッシュをコーヒーのお供にすることが多いのも特長です。
デンマークに似た文化が、スウェーデンにも存在します。コーヒーを飲む、くつろぐという意味をもつフィーカです。人と語らいながらコーヒーを楽しむのが、デンマークでは日課のひとつです。
フィンランドには、カハヴィタウコ(kahvitauko)という言葉があります。カハヴィ(kahvi)がコーヒー、タウコ(tauko)は時間を意味します。スウェーデンやデンマークと異なる点は、カハヴィタウコは法律で定められていること。フィンランドでは、仕事の合間にコーヒー休憩を必ず設ける労働法が定められています。コーヒー消費量世界一となる理由もうなずけることでしょう。
2.北欧コーヒーの特長
北欧のコーヒーは、浅煎りで飲まれることが多いのです。ここでは、北欧コーヒーの味わいや人気の焙煎度について紹介していきます。
北欧コーヒーの焙煎
北欧では、酸味のあるコーヒーが主流です。そのため、焙煎度は酸味がしっかりと引き立つ浅煎りがポピュラーです。日本では深煎りで苦味が強いものが好まれる傾向のため、北欧と比較すると真逆の好みと言えるでしょう。
コーヒーは、焙煎度によって味わいや香りが変化します。焙煎度についてはこちらの記事で詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
北欧コーヒーの味わい
北欧で人気のコーヒーの味わいは、酸味が強くフルーティなもの。苦味の強いどっしりとしたものよりは、お茶のような感覚でサラッと飲めるものが人気です。北欧でコーヒーの消費量が多いのは、浅煎りが主流で飲みやすいためと考えられるかもしれません。
3.北欧コーヒーの美味しい飲み方
北欧では、コーヒーの淹れ方も日本と違うものが人気です。ドリップコーヒーが生まれる前より、山仕事をする人たちが焚き火にケトルをかけて、粗挽きコーヒー豆を入れて煮出していた「フィールドコーヒー」「焚き火コーヒー」と呼ばれる抽出方法があります。山岳に住むサーミ人たちは雪を溶かして水を用意し、粗挽きにしたコーヒーを煮出して抽出する「焚き火コーヒー」と呼ばれる方法でコーヒーを淹れていたそう。ここからは「焚き火コーヒー」の淹れ方と、コーヒーにチーズを入れた北欧の伝統的なアレンジコーヒー「カフェオスト」の作り方をご紹介します。
北欧コーヒーの真髄「焚き火コーヒー」
サーミ人とは、スウェーデン北部をはじめ、フィンランド北部とノルウェー北部、ロシア北西部に居住する北欧の先住民族のことです。サーミ人は、粗挽きのコーヒーをそのままやかんに入れ、焚き火にかけて20分ほど煮出して飲んでいました。おいしいコーヒーを飲むために焚き火を囲んで仲間や家族と会話を楽しむ。まさにヒュッゲなコーヒータイムですね。
北欧コーヒー「カフェオスト」
サーミ人のコーヒーの飲み方は、コーヒーにひとつまみ塩を隠し味に入れることもあるそうです。また、“コーヒー・チーズ”を意味するカハヴィユーストと呼ばれるチーズをコーヒーに入れて飲む「カフェオスト」もサーミ人から広まった北欧でポピュラーなアレンジコーヒー。カハヴィユーストは熱いコーヒーに浸しても溶けにくいチーズなので、もしご自宅で作る場合は、溶けにくいタイプのチーズを選びましょう。作り方は簡単。角切りにしたチーズをカップに入れ、ホットコーヒーを注ぐだけで完成です。
4.北欧のコーヒーイベント
コーヒー愛が強い北欧では、コーヒーに関連するイベントも活発です。なかには、バリスタの技術を競う有名なイベントも存在します。ここでは、北欧で行われるコーヒーイベントの一例をチェックしていきましょう。
バリスタ・リーグ
バリスタ・リーグは、ノルウェーの首都オスロで開かれるコーヒーイベントです。2015年から行われているこのイベントは、3ラウンドで各チームが器具を使ってコーヒーを淹れる技術などを競ったり、トークショーをしたりします。リーグと名付けられてはいますが、競うよりも楽しむことを主軸にしており、北欧以外の国民も参加できるコーヒー好きのための祭典のようなイベントなのです。
ノルディック・ロースター・フォーラム
北欧を中心とした焙煎業者が集うイベントをノルディック・ロースター・フォーラムと呼びます。コーヒー豆の焙煎を評価する競技とセミナーの2段階で構成されており、最近開催されたフォーラムではサスティナブルについての勉強会が行われました。
コーヒーを美味しく飲むだけではなく、コーヒーの未来について考える場にもなっているのが特長です。
5.北欧コーヒーでくつろぎのひと時を
コーヒー消費量が多い北欧では、人々の間に強くコーヒーが根付いていると言えます。北欧の人々のくつろぎの時間には、コーヒーは欠かせません。日本では深煎りが主流となっていますが、気分を変えて北欧風の浅煎りコーヒーでくつろいでみてはいかがでしょうか。