炭コーヒーとは、インドネシアのジャワ島で飲まれるコピ・ジョスのことを指します。コーヒーに熱した炭を入れる飲み物で、インパクトは抜群。世界で唯一、ジャワ島だけで味わえるコーヒーとも言われています。本記事では、炭コーヒーの特長や味わいの他、インドネシアのコーヒー事情を紹介します。
Index
1.炭コーヒー「コピ・ジョス」とは
炭コーヒーとはその名の通り炭を入れたコーヒーのことで、発祥の地であるジャワ島ではコピ・ジョスと呼ばれています。炭を入れることで、通常のコーヒーよりカフェインが少なくなると言われています。まずは、コピ・ジョスの特長や作り方、味わいなどを確認してみましょう。
炭コーヒー「コピ・ジョス」の特長や作り方
コピ・ジョス発祥の地はインドネシアのバリ島とスマトラ島の間に位置する、ジャワ島のジョグジャカルタです。「コピ」とはコーヒーを、「ジョス」は炭をコーヒーに入れた際の音を表しています。淹れたてのコーヒーに熱した炭を入れたこの飲み物は、世界で唯一、ジャワ島だけにしかないとも言われています。
炭を入れるためコーヒーの表面が泡立っており、見た目にもインパクトがあります。グラスの底に炭が溜まっていくので、飲む際は上澄みを啜るようにするのも特長的。
1960年代に地元のコーヒー屋店主が発案したとされるコピ・ジョスは、現在も地元の人々に親しまれ続けています。
炭コーヒー「コピ・ジョス」の味わい
コーヒーに炭を入れると聞いて、美味しいのか不安に思う人もいるかもしれません。苦みが強そうに感じますが意外にも普通のコーヒーと変わらない味わいで、キャラメルのような味と評されることもあります。ややスモーキーな風味が、炭が入っていることを実感させてくれるでしょう。
炭コーヒーが誕生した理由
そもそもどうしてコーヒーに炭を入れたのか、疑問を抱く方も多いかもしれません。コピ・ジョスが誕生したのは、コーヒー屋店主の胃の不調がきっかけ。炭が胃の調子を整えてくれるのではないかと考え、コーヒーに炭を入れたことが始まりと言われています。
本当に胃の不調が改善されるのかは定かではありませんが、コーヒーに炭を入れると炭がカフェインを吸収します。そのため、炭コーヒーは通常のコーヒーと比較するとカフェイン含有量が少ない傾向にあるようです。
2.炭コーヒーを始めとするインドネシアのコーヒー事情
コピ・ジョス発祥の地であるインドネシアは、世界で5本の指に入るコーヒー生産大国です。消費量も年々増加しており、ここ数年はカフェブームも到来しています。続いてはインドネシアとコーヒーの歴史や文化を紹介します。
インドネシアのコーヒー生産
インドネシアは、世界トップ5に入るコーヒーの生産量を誇る国です。生産されるコーヒーの90%はカネフォラ種(ロブスタ種)で、スマトラ島やスラウェシ島、コピ・ジョスが誕生したジャワ島などが主な産地です。
温暖で乾季と雨季が訪れる熱帯性気候や、火山が多くミネラルが豊富に含まれる土壌は、コーヒー栽培に最適。この環境を活かして、コーヒー栽培が盛んに行われています。
インドネシアのコーヒー文化
インドネシア流のコーヒーの飲み方は、日本で一般的な飲み方とは大きく異なります。インドネシアでは、コーヒーの粉を直接カップに入れてお湯を注ぐのが一般的な淹れ方です。お湯を注いだら混ぜて数分間待ち、コーヒー粉がカップの底に沈んだら上澄みを飲みます。
コーヒー生産大国のひとつとして有名なインドネシアですが、近年では消費量も増加中です。ジャカルタなどの都市部ではカフェブームが到来しており、おしゃれで現代的なコーヒーショップも増えています。これからのコーヒー産業の発展に、期待できるのではないでしょうか。
インドネシアとコーヒーの歴史
インドネシアに初めてコーヒーが持ち込まれたのは、1690年代のオランダ植民地時代と言われています。当時はアラビカ種のコーヒーがジャワ島に持ち込まれましたが、自然災害で全滅してしまいました。その後、1699年に再び持ち込まれたものがジャワ島から各地に広まっていったのです。
1830年代には、オランダ東インド会社による指示で、輸出用のコーヒー生産が開始されました。さび病や第二次世界大戦の影響で一度コーヒー生産は衰退してしまいましたが、インドネシアの独立後に生産量が回復。現在も盛んに生産が行われています。
3.炭コーヒーにおすすめのインドネシア産コーヒー
インドネシアでは、カネフォラ種(ロブスタ種)が多く生産されています。また、アラビカ種を生産している地域もあるため、同じインドネシア産コーヒーでも違いや個性を感じられるでしょう。ここでは、インドネシア産のおすすめコーヒーを紹介します。
ジャワコーヒー
ジャワコーヒーは、ジャワ島で栽培されるカネフォラ種(ロブスタ種)のコーヒーです。酸味が控えめで、苦みとコクをしっかりと感じられるのが大きな特長。全体的な味わいとしてはマイルドです。また、ロースト感たっぷりな香ばしさも楽しめます。カフェインの量が他のコーヒーよりも多いと言われています。
バリ・アラビカ
バリ島で栽培されるアラビカ種のコーヒーを、バリ・アラビカと呼びます。バリ島でアラビカ種の栽培が始まったのは1990年と最近のことで、無農薬栽培や手摘みによる丁寧な収穫で高い品質が保たれています。コーヒーの実が収穫後にしっかりと天日干しされるため、甘味があるのが特長です。品の良い香りに優しい甘味と、深いコクが合わさった上質な味わいに魅了される人も少なくありません。
4.炭コーヒー以外にもある希少なインドネシアコーヒー
インドネシアには、希少性の高いコーヒーがたくさんあります。なかには、非常に高価で手に入り難いものも。ここでは、インドネシアの高級コーヒーを紹介します。
マンデリン
マンデリンは、スマトラ島で生産されるアラビカ種のコーヒーです。高級銘柄と名高く、世界的に人気が高まっています。重厚感のある苦みと控えめな酸味で、日本人にもよく好まれる味わいです。ミルクを入れて、カフェオレでも美味しく飲めます。
マンデリンについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
トラジャコーヒー
スラウェシ島で栽培され、アラビカ種最高峰として名高いのがトラジャコーヒーです。トラジャアラビカとも呼ばれるこのコーヒーは、オランダ王室御用達でしたが第二次世界大戦で一度は姿を消してしまいました。しかし、日本のコーヒー会社の援助により現在では復活しています。
グルメコーヒーの別名を持つトラジャコーヒーは、クリーミーで滑らかな味わいが魅力。それでいて力強いコクを感じられるのもポイントです。
ガヨ・マウンテン
ガヨ・マウンテンはスマトラ島北部のガヨ高地で栽培されるコーヒーで、幻のコーヒーとも呼ばれています。化学肥料を使用せず、完全な自然栽培によって生産されており、苦みと酸味のバランスが絶妙。
スマトラ島で主流なコーヒー精製方法はスマトラ式ですが、ガヨ・マウンテンは水洗式での精製を行います。焙煎度によっても味わいに変化がある高級銘柄です。
5.炭コーヒーでインドネシアの文化に触れて
炭コーヒーを初めて見た人は、その見た目に驚くかもしれません。ですが、苦みはそれほど強くはなく、通常のコーヒーに近い味わいです。炭コーヒーが生まれたインドネシアのコーヒーは、どれも個性豊か。インドネシアのコーヒーで、現地の文化を感じてみてはいかがでしょうか。