焙煎士やバリスタなど、コーヒーに携わる人々がお客様に美味しいコーヒーを届けるために日頃から行っている「カップテスト」。この記事ではコーヒーの品質や風味を確かめるカップテストについて、その目的ややり方、評価方法を解説します。
Index
1.カップテストとは? カップテストを行う目的
カップテストとは、コーヒーの品質や風味を評価する方法のことです。カップテストを行うタイミングは、コーヒー豆の仕入時と、焙煎したコーヒー豆を販売する前の2回が一般的です。
仕入時に行うカップテストでは、「ファンダメンタル・テイスト(基本的な風味)」を確かめます。焙煎したコーヒーを販売する前に行うカップテストでは、コーヒーの持つ風味や個性に着目し、「プライマリー・テイスト(主要な風味)」と「セカンダリー・テイスト(二次的な風味)」を確かめます。
2.基本的な風味評価を行う「ファンダメンタル・テイスト」
「ファンダメンタル・テイスト」は、仕入れの際に行う基本的な風味評価のことです。好ましくない風味のあるコーヒー豆を取り除くために行います。
「ファンダメンタル・テイスト」で評価される好ましくない風味としては、以下の4つが挙げられます。
- ファーメンテーション(発酵臭・味)
- モールド(カビ臭・味)
- 薬品臭・味
- フォーリン・テイスト(コーヒー以外の風味)
3.コーヒーの主要な風味評価を行う「プライマリー・テイスト」
焙煎後のコーヒーの仕上がりを確認するカップテストでは「プライマリー・テイスト」と呼ばれる主要な風味の評価を行います。コーヒー豆が商品イメージに適した風味であるかや、使用目的に沿っているかを確認します。
このプライマリー・テイストでは、以下の項目が評価基準となります。
- アロマ(芳香性)
コーヒーの抽出液から生まれる、好ましい香りのこと。 - 甘味
熟れた果実のような、甘く柔らかい風味のこと。 - アシディティ(良好な酸味)
本来コーヒーに備わるべき心地よい、良好な酸味のこと。 - ボディ
飲み応え、コクなどと表現される風味のこと。 - クリーンネス
不快な匂いや味がなく、すっきりと透明感のある風味のこと。 - 渋味
コーヒーのマイルドさを損なう渋い風味のこと - パストクロップ(枯れた風味)
収穫されたばかりのコーヒー(ニュークロップ)の風味が弱まった、古い質感の風味のこと。収穫から長い時間が(1年以上〜)経過すると発生する。
4.コーヒーの風味・特性の評価を具体的に行う「セカンダリー・テイスト」
プライマリー・テイストに続いて、「セカンダリー・テイスト」では、さらに具体的なコーヒーの風味・特性について評価します。
セカンダリー・テイストは、アメリカのSpecialty Coffee Association(スペシャルティコーヒー協会)が作成したフレーバーホイールの表現をベースに行います。「ワインのような」「グレープフルーツのような」「ナッツのような」「ウッディな」など、食べ物や素材にたとえて表現することで、お客様や焙煎士、バリスタとコーヒーの風味や質感を共有しやすくなります。
お客様が求めるコーヒーを提供するために、セカンダリー・テイストを確かめることは欠かせません。コーヒーを味わうお客さんの顔や体験を想像しながらカップテストを行うことで、コーヒーロースターは求められる味わいを作り出しています。
5.カップテストをやってみよう
カップテストは「難しそう」と感じる方もいるかもしれませんが、手順はとてもシンプルです。基本的なカップテストの方法や用意するもの、注意事項をご紹介します。
用意するもの
・コーヒー豆(挽き豆ではなく、豆のまま)
・コーヒーミル(粉砕器)
・沸騰したお湯
・耐熱容器
・スプーン (やや大きめのスプーン)
カップテストのやり方
コーヒーの風味を評価するカップテストでは、複数のコーヒーを比較して行うのが一般的です。カップテストするコーヒーを同じ手順で準備・抽出し、条件を揃えることがポイントです。
- コーヒー豆をミルで粗挽きにし、耐熱容器に入れる。カップごとの条件を揃えるため、まとめてではなく1杯分(7g)ずつ挽くようにする。
- カップに約135mlのお湯を注ぎ、しばらく待ってスプーンでかきまぜる。このときに立つ香りを嗅ぎ、コーヒーの香りを確かめる。
- カップ表面に浮いている泡や粉を、スプーンで取り除く。
- スプーンを使用してカップからコーヒーをすくいとって口に含む。このとき、液体をスプレー状になるように吸い込み、コーヒーの風味を口内全体に広げるようにする。口に含んだコーヒーは飲み込まず、別のカップに毎回吐き出す。
またカップ抽出液の温度によっても味の評価が変わるので、カップテストは熱い時と冷めてからと2回行うのがよい。
カップテストの注意事項
カップテストを正確に行うためには、次のことに注意しましょう。
・水や容器、道具などは無味無臭のものを使用する
・匂いの強い化粧品や香水を着用しない
・過度の飲酒・喫煙を避ける
・カップテスト前に過度の刺激物を摂取しない
・風邪をひいているときは行わない、万全の健康状態で行う
コーヒー以外のものに匂いがついていると、コーヒーの香りや風味を正しく評価できなくなってしまいます。カップテストを行う際に使用・着用するものは、匂いのないものを選びましょう。
また、飲酒や喫煙、刺激物などの味覚を鈍らせてしまうものは、カップテストを行う前は摂取しないようにしましょう。
最近ではコロナ感染症予防対策の観点より、スプーンから各自のカップにコーヒーを移して口に含むようなカップテストも行われています。
カップテストでコーヒーをもっと理解しよう!
コーヒーのプロたちが日々行なっているカップテストを用いれば、世界中で作られているコーヒーの個性や風味をよりダイレクトに感じることができます。ぜひフレーバーホイールに記載されている表現を使いながら、それぞれのコーヒーの香りや風味、質感などを他の人と共有しながら楽しんでてはいかがでしょうか。