トルココーヒーとは、細かく挽いたコーヒー豆を煮出してコーヒーを抽出した飲み物のことです。16世紀ごろにイスタンブールの市街地にある社交場で楽しまれたと言われています。
占いができるといった楽しみ方もあることから日本でも人気を集めるトルココーヒー。その魅力や作り方をご紹介します。
1.トルココーヒーについて
トルココーヒーと言っても、トルコ産のコーヒー豆で淹れるコーヒーを指すわけではありません。それではどのようなコーヒーをトルココーヒーと呼ぶのでしょうか?
まずは、トルココーヒーの特長をわかりやすく解説します。
トルココーヒーとは?
トルココーヒーは長い歴史を持つコーヒーです。日本人のよく知るハンドドリップによるコーヒーは、トルココーヒーから100年以上後にようやく誕生したとされています。
トルココーヒーは16世紀中ごろ、オスマン帝国時代に広く一般に知られるようになりました。16世紀末までには、イスタンブールの市街地に現在のカフェの原型ともなる社交場が増え、人々はトルココーヒーとおしゃべりを楽しむようになったそうです。
ハンドドリップで淹れるのと違い、トルココーヒーは細かく挽いたコーヒー豆を煮出してコーヒーを抽出します。実際に飲むのは上澄み部分だけで、コーヒーの苦みや風味がギュッと詰まった味わいは、現在のエスプレッソの原型とも言われます。
2013年、日本の和食とともに、ユネスコの無形文化遺産として登録されたことをきっかけに、日本でも知名度が高まっています。
コーヒーや道具の特長
トルココーヒーは、専用の道具であるイブリック(ジェズベとも呼ばれる)を使って淹れます。
イブリックは長い持ち手のついたひしゃくのような形の道具。熱が伝わりやすく、コーヒーの味に影響しにくい銅や真鍮製であることも特長です。小さな容器部分に水とコーヒー豆を入れてしっかりと煮出すことで、濃いコーヒーができあがります。
現在は火を使って煮だすのが主流ですが、熱した砂によって煮だすのが伝統的な方法。独特の道具や淹れ方を目にすると、歴史と伝統、そして中東のエキゾチックなムードをきっと感じられるはずです。
トルココーヒーで占いができる?
挽いたコーヒー豆ごと煮だすスタイルのトルココーヒー。そのため、コーヒーを飲み終えた後にも、コーヒーカップの底にはコーヒー豆の粉が残ります。残ったコーヒー豆の粉で占うのが、オスマン帝国時代から伝わるトルココーヒー占いです。
占い方はとても簡単。飲み終えたコーヒーカップにソーサーをかぶせてから上下をひっくり返し、カップに残ったコーヒー豆の粉末が描き出す模様を見て占います。カップの下半分は過去、上半分は未来で、たとえば模様がダイヤならプロポーズ、花なら幸せ、道ならレベルアップが近いことなどを示しています。
もちろん、浮かび上がる模様の見え方は人によってさまざま。友達同士でお互いに占ってみてもおもしろいかもしれませんね。
2.自宅でできるトルココーヒー
ハンドドリップが広まっている日本ではなじみのない淹れ方とはいえ、トルココーヒーの淹れ方はそれほど難しくはありません。方法を知っていれば、おうちでも楽しむことができるのです。
そこで、トルココーヒーの淹れ方や美味しく作るためのポイントをご紹介します。
トルココーヒーの基本的な作り方
トルココーヒーはコーヒーの強い風味が特長。いつもより少し小さめのコーヒーカップで少量をじっくりと楽しみます。より濃く抽出できるように、深煎りのコーヒー豆を細挽きで用意しておくと良いですね。
1.挽いたコーヒー豆約6gと水60~70mlをイブリックに入れる。
2.ごく弱い火にかけて、スプーンで混ぜながら煮立たせる。
3.泡が吹きたったら火からおろし、スプーンでまぜてから再び火にかける。
4.3を3回ほど繰り返してコーヒーを煮出していく。
5.小さめのコーヒーカップに泡が消えないようにゆっくりと注ぐ。
トルココーヒーにはコーヒー豆の粉がたっぷりと含まれます。うっかり口をつけると、口の中がコーヒー豆の粉まみれになってしまうことも。コーヒーカップに注いだ後はコーヒー豆の粉が沈むのを待ってから、上澄み部分を飲んでくださいね。
砂糖は先に入れる
トルココーヒーは、お好みで砂糖をくわえるのもおすすめ。
最近はブラックで飲む人も増えているようですが、中東ではたっぷりの砂糖で甘いトルココーヒーを楽しむ人が多いとされています。自分の好みに合わせて砂糖の量を調整すると良いですね。
砂糖はコーヒー豆の粉、水と同じタイミングで5gほどをくわえます。上澄みを飲むコーヒーなので、砂糖が沈殿してしまわないように、しっかり溶かすのがポイントです。
3.トルココーヒーについてのよくある疑問を解決
長い歴史を持つトルココーヒーですが、日本人にはまだまだ新しく、ミステリアスな存在。そのため、ちょっとしたことにも疑問を感じるのは当然のことです。
そこで、トルココーヒーについて、よくある疑問にお答えしましょう。
イブリックを持っていなくても淹れられる?
最近はさまざまなイブリックが手に入るようになりましたが、それでもイブリックは日本ではまだまだ珍しい道具と言えるでしょう。
けれど、心配は無用です。イブリックがなくても小ぶりの鍋があれば、トルココーヒーを淹れることができます。この時、イブリックほどではなくても、鍋はできるだけ小さいサイズを選ぶのがポイント。あとは基本の作り方に従って、鍋をイブリックに見立ててコーヒーを煮出しましょう。
素材も銅や真鍮じゃなくてもかまいません。ただし、鉄製の鍋は避けましょう。鉄には鉄分が豊富に含まれるため、コーヒーの風味を損なう恐れがあります。
トルココーヒーに合うコーヒー豆はどんなもの?
トルココーヒーに使うコーヒー豆は、お好みで選んでも問題ありません。ただし、エスプレッソの原型ともされるトルココーヒーですから、フレンチローストやイタリアンローストといった深煎りのコーヒー豆を選ぶのがおすすめです。
トルコでは深いコクと苦みを味わうものとされているので、酸味の少ないコーヒー豆にすると、本場のトルココーヒーに近づけることができます。
また、どんなタイプのコーヒー豆であっても、小麦粉のようにかなり細かく挽くことが大切です。粗く挽いたコーヒー豆だと、コーヒーの風味をじゅうぶんに煮出すことができません。
イブリックの価格帯は?
銅、真鍮といった素材にもよりますが、イブリックは3,000円前後から手に入ります。サイズそのものは小ぶりですから、高くても1万円台で購入できることがほとんどのようです。
ただ、イブリックはデザインやディテールにこだわったものが多く、容器の形、持ち手のデザインなど、こだわりだすと選択肢がどんどん増えていきます。ステキなデザインのイブリックは部屋のインテリアとしても役立ちますよ。
4.いつもとはひと味違うコーヒーを
日本人におなじみのハンドドリップコーヒーとは異なるスタイルのトルココーヒー。
パウダー状に細かく挽いたコーヒー豆を専用の道具・イブリックで煮出していれる伝統的なコーヒーは、コーヒーの歴史や新たな魅力を知るのに最適です。
コーヒーカップに注いで粉が沈むまでのひと時は、トルココーヒーの魅力の一つ。親しい友人との時間にトルココーヒーを取り入れてみてはいかがでしょうか?飲み終えた後の占いまで楽しめば、トルコ文化を身近に感じられるかもしれませんね。