コーヒー豆の一種であるロブスタですが、使用されるのは主に缶コーヒーなど工業用製品。カフェなどで提供されることはあまりないので、ロブスタについてあまり知らないという方も多いのでは?そこで、コーヒー豆のロブスタについて原産地や特長、味わいなどを紹介します。さらに、アラビカ種との違いについてもお伝えします。
1.コーヒー豆のロブスタとは?
コーヒー豆は、アカネ科コフィア属の熱帯植物から採れる種子。産地や栽培法によって様々な種類がありますが、主にアラビカ種とカネフォラ種の2つに分かれます。ロブスタはそのカネフォラ種の一つで、まれに総称してカネフォラと呼ばれることもあります。
それでは、最初にロブスタの原産地や特長を見ていきましょう。
ロブスタはアフリカ原産
ロブスタの属するカネフォラ種は、世界で生産されるコーヒー豆の約40%を占めています。これは約60%を占めるアラビカ種に次ぐ生産量です。
ロブスタは今から100年以上前、1898年にアフリカのコンゴで発見されました。ラテン語で強靭(きょうじん)や力強いといった意味を持ち、病気に強いのが特長です。さらに、高温多湿の環境に適応することや、1本の木からたくさんのコーヒー豆を収穫できる点も評価され、世界中に広がりました。
標高300~800mの低地でも栽培できるため、アラビカ種に不向きとされるアジア諸国での栽培が盛ん。中でもベトナムは、ロブスタの生産高から、近年は世界第2位のコーヒー生産国となっています。
インパクトある苦みと香ばしさ
強靭を意味するロブスタは、その味わいもまた力強いことで有名です。
コーヒーらしい苦みや渋みが強く感じられる一方で、酸味はやや弱め。麦茶のような香ばしさを感じる人もいます。インパクトの強い風味から、少量のコーヒー豆からでもしっかりとした味わいのコーヒーを淹れることができます。
2.ロブスタは「あまり人気がない」って本当?
カフェで飲むコーヒーのほぼすべてがアラビカ種の日本。こだわりを持ってロブスタを提供するショップもありますが、ごくわずかというのが実情です。日本人の多くがアラビカ種を選んでいることになりますが、ロブスタは本当に人気がないのでしょうか?
日本人になじみ深いアラビカ種と比較しながら、ロブスタの風味について具体的にお伝えします。
アラビカ種との違いは成分バランス
アラビカ種とロブスタ(カネフォラ種)の違いは、成分バランスにあります。
コーヒー豆を焙煎するとキャラメルのような芳しい風味がたちますが、この元となっているのが少糖類といった成分。少糖類は他にも、コーヒーならではの色、酸味や苦みにも関わっています。ロブスタはアラビカ種よりも少糖類の含有量が少なめ。そのため、アラビカ種のようなコーヒーらしいコクや香りが控えめなのです。
一方、ロブスタはカフェインの含有量が多く、アラビカ種のおよそ2倍。とはいえ、ロブスタ特有の苦みはカフェイン量ではなく、クロロゲン酸類と呼ばれる成分の影響によるものとされています。
今、ロブスタが注目され始めているわけ
ロブスタは、アラビカ種よりも風味が変化しにくいというメリットから、缶コーヒーなどの加工品によく利用されています。しかし最近は、おうちで楽しむコーヒーとしても注目を集めています。
苦みや渋みばかりが注目されてしまうロブスタ。しかし、麦を炒ったような香ばしさ、控えめな酸味、甘いスイーツとの相性といったロブスタの特性は、よく知るアラビカ種とは異なる魅力を放っています。ロブスタを知ることで、コーヒーの新たな楽しみ方を探してみるのも良いですね。
アラビカ種とカネフォラ種のハイブリッドも
近年はコーヒー豆の改良が進んでおり、アラビカ種の豊かな風味とカネフォラ種の病気への耐性、栽培しやすさをあわせ持つハイブリッドタイプのコーヒー豆が登場しています。代表的なハイブリッドタイプの栽培品種をいくつか紹介しましょう。
世界有数のロブスタ産地である西アフリカでは、アラブスタと呼ばれるブラジルの研修機関で開発されたカネフォラ種とアラビカ種を交配させた栽培品種の生産が増えつつあります。カチモールはアラビカ種のカトゥーラと、アラビカ種とカネフォラ種の偶発的な雑種をベースにしたハイブリッドチモールを掛け合わせたもので、病気に強く優れた生産量で人気があります。また、アラビカ種の産地で有名なコロンビアで開発されたカスティージョは、ハイブリッド栽培品種の先駆けであったバリエダコロンビアに改良を加えたクオリティの高い味わいで、現在コロンビアの主力になっています。
もしコーヒー専門店などで見かけたら、ハイブリッド特有の風味をぜひ味わってみて下さい。
【プロフェッショナルからワンポイント】
コーヒーインストラクター検定講師もされている新井商店のオーナー新井様にアドバイス頂きました。
珈琲豆 新井商店店主 新井弘之氏
アアラビカ種とカネフォラ種は染色体数が異なり、通常は自然交配することはありません。
ハイブリッドタイプの栽培品種は、偶発的な雑種をベースに改良を加えたり、薬品処理でカネフォラ種の染色体の数をアラビカ種の数に合わせてから交配させることで作られています。
従ってハイブリッドタイプの栽培品種は、アラビカ種やカネフォラ種とは別の、新たな交配種ではなく、ティピカやブルボン、ゲイシャなど一緒の、アラビカ種のいち栽培品種であることをご理解ください。
3.ロブスタのコーヒーを楽しむ方法
コーヒー豆専門店でもあまり見かけないロブスタのコーヒー豆。もし手に入れることができたなら、ロブスタならではの味わいをぜひ楽しんでみましょう。
とは言え、ストレートで飲むとかなり苦みが強いので、ロブスタに適した楽しみ方をお伝えしておきましょう。
アラビカ種と絶妙ブレンド
ロブスタのインパクトある苦みは、アラビカ種とブレンドするのにぴったりです。少し苦みを加えたい時にロブスタのコーヒー豆を追加すれば、パンチの効いた味わいに変わります。
また、アラビカ種に比べてカフェイン含有量が多いので、眠気覚ましとしてロブスタをブレンドするのもおすすめです。
氷たっぷりのアイスコーヒー
ロブスタのコーヒー豆は、アイスコーヒーとして使うのも便利です。氷をたっぷり入れてコーヒーが薄まっても、独特の香ばしさや苦みが失われることはありません。
冷たく冷やして飲むとロブスタの苦みが和らぎ、逆にのど越しの良さにつながると感じる人も多いようです。
ベトナムコーヒーで甘みとコクをプラス
栽培されるコーヒー豆の90%ほどがロブスタとされるベトナム。そんなベトナムで愛され続けているのがベトナムコーヒーです。ロブスタに足りないとされるコクや甘みを、コンデンスミルクで補うデザートタイプのコーヒーは、1度飲むとヤミツキになる味わいです。
ベトナムコーヒー用のフィルターもありますが、ハンドドリップでも簡単に作れますよ。
ベトナムコーヒーの作り方
1.ロブスタのコーヒー豆をやや粗めに挽く。
2.コーヒーカップにたっぷりのコンデンスミルクを入れておく。
3.ペーパーフィルターをセットして、カップに直接コーヒーを抽出する。
4.ロブスタなら新しいコーヒーの楽しみ方と出会えるかも
日本では缶コーヒーやインスタントコーヒーに使われることが多く、普段親しむ機会の少ないロブスタのコーヒー豆。けれど、強い風味を生かすことで、今までにないコーヒーの楽しみ方と出会える可能性を秘めています。
ロブスタを扱う店と出会えたら、ぜひアラビカ種にはない独特の味わいに触れてみて下さいね。
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