コーヒーが好きな人であれば、ゲイシャというコーヒー豆の名前を耳にしたことがあるかもしれませんね。世界でもっとも高級なコーヒー豆の一つとされるゲイシャとはどんなものなのか、この記事ではその由来や特長、楽しみ方についてご紹介します。
1.ゲイシャ種のコーヒーとは
ゲイシャと聞くと、日本人がまずイメージをするのは「芸者」ではないでしょうか?しかし、ここで紹介するゲイシャはコーヒー豆の一種で、今世界でもっとも注目されているスペシャルティコーヒーの一つです。
まずは、ゲイシャ種がどんなコーヒー豆なのか、詳しくお伝えしていきます。
アラビカ種に属する品種の一つ
コーヒー豆はアカネ科コフィア属の熱帯植物。飲用目的で栽培され流通しているのは大きく分けてアラビカ種、カネフォラ種の2種類です。そのうち、生産量の6割を占めるアラビカ種はデリケートな味わいからグルメコーヒーとして人気です。
アラビカ種はさらに細かな品種に分類されており、ゲイシャ種はその一種。アラビカ種の突然変異によって生まれたとされています。コーヒー豆はより生育しやすいよう、幾度となく品種改良が行われるのが一般的ですが、ゲイシャ種は原種に近い状態のコーヒー豆だと言われています。
原産地はエチオピア
ゲイシャ種は、もともとエチオピアのゲシャという地域に自生していたことからゲシャ種と呼ばれていましたが、やがてゲイシャ種として知られるようになりました。名前の由来には他にも、現地に出入りした日本人業者が「ゲイシャ」と聞き間違えたという説もあります。
ゲイシャ種は病気に弱く、樹高が4m近くもあって栽培の難しいコーヒー豆です。さらに収穫量が少ないこともあり、長い間、コーヒー農園からは生産には不向きと敬遠されてきました。
2.ゲイシャ種の歴史と人気の理由
採算が悪く、コーヒー農園から敬遠されてきたゲイシャ種。それでは、どうやって世界でもっとも高級なコーヒーとして注目を集めるようになったのでしょうか?
それでは、ゲイシャ種の歴史的な背景と人気を集めるようになった理由を紹介します。
一度は忘れ去られたゲイシャ種
コーヒー豆の品種としての歴史は浅く、ゲイシャ種がエチオピアで発見されたのは1931年のこと。1950年代にはさび病対策に使われる目的で南米・コスタリカへと渡り、1960年代に中米・パナマへ伝わりました。
当時からゲイシャ種の美味しさは広まっていたものの、収穫量の少ないゲイシャ種がコーヒー農園で定着することはほとんどありませんでした。そして少しずつ、ゲイシャ種の存在は忘れられていったのです。
エスメラルダ農園の努力
ゲイシャ種の栽培を続ける数少ないコーヒー農園の一つが、パナマにあるエスメラルダ農園。エスメラルダ農園は標高1,600mほどに位置する世界有数のコーヒー農園。豊かな自然と降雨量に恵まれる上、無農薬や手摘み収穫など、こだわりある生産姿勢に定評があります。
ゲイシャ種は1,500~1,700mもの標高を好むため、エスメラルダ農園は最適な環境でした。そして、農園で働く人たちの努力が、ゲイシャ種の安定した収穫につながったと言えるでしょう。
世界が驚いたゲイシャショック
ゲイシャ種が再び脚光を浴びるキッカケとなったのが、2004年に開催されたコーヒーの国際品評会です。エスメラルダ農園がゲイシャ種を出品したところ、これまでにない高値で落札されて優勝。ゲイシャショックと呼ばれるこの出来事から、ゲイシャ種は1日にして世界一有名なコーヒー豆となったのです。
エスメラルダ農園のゲイシャ種はその後も毎年優勝を重ね、2008年には品評会にゲイシャ部門が設けられることになりました。その年に優勝したカルレイダ農園のゲイシャ種はコロンビアへ持ち込まれ、栽培地が拡大。
2010年には1ポンド当たり170ドルもの高値をつけたエスメラルダ農園のゲイシャ種を筆頭に、ゲイシャショックは今もコーヒー業界を席巻しています。
3.ゲイシャコーヒーの特長
これまでにない高級なコーヒーとして知られるゲイシャコーヒー。値段が値段だけに、その味や香りはどのようなものか気になりますよね。
そこで、ゲイシャコーヒーの味わいについて、特長をわかりやすく紹介します。
ゲイシャはどんな味がする?
ゲイシャコーヒーは、オレンジやグレープフルーツを彷彿とさせるフレッシュな酸味、はちみつやチョコレートのような濃厚な甘みが特長。ワインのように繊細で複雑なフレーバーを楽しめます。初めて口にする時には、普段飲んでいるコーヒーとの違いに驚くことでしょう。
ゲイシャの香りとは?
ゲイシャコーヒーの香りは、香水とも称されるほどのフローラルなアロマが特長。甘く爽やかな香りから、ジャスミンやアールグレイといった香り高いお茶を連想する人も少なくありません。飲み終えた後に続く華やかな余韻は、ゲイシャコーヒーならではの魅力です。
値段が高いのはなぜ?
ゲイシャコーヒーが高値になるのにはいくつか理由があります。
何よりもまず、ゲイシャショックから始まった高値での取引が、今なお続いていること。たとえば、有名なエスメラルダ農園のゲイシャ種は1区画当たり300ポンドという高値でオークションにかけられますが、毎回数時間で完売してしまうそうです。
また、ゲイシャ種は栽培が難しく収穫量の少ないため、希少価値の高いコーヒー豆であるということも大きな理由でしょう。多くのコーヒー農園がゲイシャ種の栽培をしてこなかったため、苗自体の数が少ないということも考えられます。
4.ゲイシャコーヒーの楽しみ方
世界のコーヒー通に絶賛されるゲイシャコーヒーですから、せっかく口にするならその美味しさを余すことなく堪能したいところ。
そこで、ゲイシャコーヒーを楽しむためのポイントをお伝えします。
美味しい淹れ方
ゲイシャコーヒーの上品な香味や繊細な味わいを引き立たせたいなら、焙煎しすぎないことが大切。シナモンローストからミディアムロースト程度の浅めの煎りあがりにしておけば、ゲイシャコーヒーならではの個性を楽しむことができるでしょう。
コーヒーを淹れる時のお湯の温度は75~85℃くらいのやや低めがおすすめです。苦みや雑味が出にくくなるので、ゲイシャ種の甘みや酸味をしっかり感じられるはず。丁寧にゆっくりと抽出するのもポイントです。高級なコーヒー豆なので気が引けるかもしれませんが、コーヒー粉はいつもどおりの量を使ってくださいね。
コーヒー豆本来の甘みが強いので、砂糖やミルクを入れず、まずはブラックで味わってみましょう。
どこで手に入る?
希少価値が高く高級なゲイシャ種のコーヒー豆ですが、コーヒー専門店の他、最近ではネット通販でも気軽に購入できます。ゲイシャ種といっても品質は様々ですので、色々飲み比べてみるのも良いですね。
店頭でカフェメニューとして提供するお店はまだ少ないですが、全国展開するコーヒーショップで限定販売されることも。また、スペシャルティコーヒーを扱うコーヒー専門店のなかには、さまざまなゲイシャ種のコーヒー豆をいくつも取り揃えるお店もあります。
5.希少価値のあるゲイシャコーヒーで贅沢なひとときを楽しんで
ゲイシャショックと表現されるほど、衝撃的な美味しさで世界を驚かせたゲイシャ種のコーヒー。
栽培が難しい上に、他の品種と比べると収穫量も少ないため希少価値が上がり、値段が高めです。気軽に飲めるものではないかもしれませんが、特別な時間や大切な相手と飲むのにぴったりのコーヒーとも言えるでしょう。
機会があれば、世界が絶賛するゲイシャコーヒーの美味しさを楽しんでみてくださいね。