家で味わう至極のコーヒー。安らぎのひとときだから、コーヒーの種類だけでなく淹れ方にもこだわりたいですよね。ネルドリップは、紙のフィルターではなくネルという布をフィルターとしてドリップコーヒーを淹れます。ネルドリップとほかの淹れ方との違いやアイテムのお手入れ方法、ネルドリップコーヒーの美味しい淹れ方を解説します。
1.ネルドリップとは?
紙ではなく、布をフィルターとして淹れるネルドリップコーヒー。ほかにはどんな特長があるのでしょうか?そもそも、どうして布を使うの?そんな、ネルドリップの気になる基本情報を紹介します。
フランネルがフィルターに
ネルドリップの「ネル」は、フランネルを略した言葉です。厳密に言うと、コットンを素材とし起毛の加工をしたコットン・フランネルを指し、衣服のネルシャツと同じ素材です。柔らかくて軽い織り布であり、ネルドリップ用と衣服用ではその厚さが異なります。
ネルドリップコーヒーは、ネルを袋状にして中にコーヒー粉を入れ、お湯をかけてコーヒーを抽出します。紙のフィルターを使ったペーパードリップコーヒーの、フィルターを変えたバージョンと考えて良いです。
ネルドリップの特長
名前の通り、フィルターにネルを使用している点が最大の特長です。使い捨てではなく、何度も洗って使用します。
ネルは紙のフィルターよりも目が粗いので、コーヒーオイルが多く抽出されやすく、まったりと柔らかく甘い口当たりを感じる人が多いですよ。
ネルドリップとペーパードリップの違い
ネルドリップは、目が粗いことでコーヒーのうまみが引き出されてまろやかな味わいに。対してペーパードリップは、すっきりとしたクリアな味わいになるとされます。
ペーパードリップは、幅広い種類のコーヒーを後味すっきりで楽しむことができますので、初心者におすすめです。ドリップコーヒーに慣れ、より風味にこだわりたい人にネルドリップが適しているでしょう。
また、取り扱いの手間についても違いがあります。ペーパードリップは使い捨ての紙フィルターを使用しますから、コーヒーを淹れる準備や手入れにほとんど時間がかかりません。手間暇がかかるネルドリップですが、得られるコーヒーのコクはファンが多く、ネルドリップが至高のコーヒーと表現する人もいます。
ネルの裏表は?
ネルの裏表は、どちらが正しいかではなく、どちらが好みかで使い分けます。
ネルは、ふわふわとした起毛の面とそうでないツルッとした面があり、一般的に起毛面が裏、ツルッとした面が表です。喫茶店で本格コーヒーを淹れる人などには、起毛面を外側にして使用する人が多くいます。起毛面を内側にすると粉が繊維にからんで目詰まりを起こすなどの原因となり、手入れが大変なためです。
さらに、味にも違いが出ます。起毛面を内側にするとコーヒーオイルがネルに吸収され、ペーパードリップに近いすっきりとした味になります。一方、起毛面を外側にするとよりコクが深くまろやかな味わいに。コーヒーオイルが抽出されたコクのある味がネルドリップの醍醐味とも言えますので、まずは起毛面を外側にして淹れてみて、もっとすっきりした味にしたいと感じたら逆パターンを試してみましょう。
2.ネルドリップのアイテムのお手入れ
ペーパードリップの場合フィルターは使い捨てですが、ネルドリップはネル素材のフィルターを洗って複数回使用します。使用前の準備や使用しない時の適切な保存が欠かせません。ネルドリップに必要なアイテムとお手入れの方法を紹介します。
ネルドリップに必要なアイテム
ネルドリップに必要なものは以下のとおりです。
・ネルフィルター
・ネルフィルターを取り付けるハンドル
・ネルドリップ用のサーバー
・コーヒーケトル
・コーヒー粉
紙フィルターは広げてドリッパーにセットするだけですが、ネルフィルターは輪っかのついたハンドルにセットしなければいけません。ハンドルが付いている分安定しづらいので、ネルドリップ専用のサーバーを使用することが望ましいです。通常のサーバーで代用する場合は、ハンドルを固定するためのスタンドがあると安定して淹れやすいので、あわせて用意しましょう。
新品ネルフィルターの使用前処理
新品のネルフィルターは、表面に糊や漂白剤、汚れなどが付着している場合があるので、煮沸してきれいにします。時間は約20分です。コーヒー粉やコーヒーの出がらしを入れて煮沸すると、コーヒーとなじみやすくなりますよ。煮沸したら水洗いをし、水気がなくなるまで固く絞ります。ネルフィルターが冷えないよう、お湯で洗うとなお良いです。数回絞って、しっかりと水気を取り除きましょう。ネルを引っ張りすぎて、穴が空いたり生地が傷んだりしないよう注意してください。
ネルフィルターの使用後のお手入れ
使い終わったネルフィルターは、コーヒーが出なくなるまで水でもみ洗いします。洗い終えたら、水を張ったタッパーにネルがひたるようにして入れ、冷蔵庫で保管します。ハンドルから取り外しても、そのままでも良いです。水はこまめに取り替えましょう。朝昼晩と水を取り替えられるのがおすすめです。
次の使用まで間があく場合は、水でもみ洗いしよく絞ったネルフィルターを、ジッパー付き袋などに入れて冷凍庫で保管します。水にさらせばすぐに解凍できますから、次に使用する時も手間がかかりません。
ネルフィルターは、毎日しっかりと手入れをしていても、コーヒーの脂肪分等が生地の目の間について次第に茶色く変色します。目詰まりの原因にもなりますので、定期的に煮沸をし清潔に保ちましょう。
3.ネルドリップコーヒーの淹れ方
少しお手入れに手間がいるネルドリップ。その分、ばっちり美味しいコーヒーを淹れて味わいたいですね。ネルドリップの美味しいコーヒーの淹れ方を紹介します。
ネルを洗ってハンドルにセット
冷蔵庫で保管しているネルを水洗いし、よく絞ります。水気が残っていると、美味しいコーヒーを淹れるために欠かせない蒸らしの作業が上手にできませんので、しっかりと水気を取り除きます。そしてハンドルにネルフィルターをセット。ハンドルにセットした状態で保管している人は、そのまま洗って絞るのでOKです。その場合絞りづらい場合もありますので、清潔なタオルに挟んでパンパンと叩き、水気をとると良いでしょう。
ネルフィルターにコーヒーの粉を入れる
次に、ハンドルに取り付けたネルフィルターの中にコーヒー粉を入れます。コーヒー1杯約120ml当たり、中挽きで10g前後です。2杯淹れる場合は約20gの粉を入れましょう。粗挽きの場合は少し多めの量にします。粉を入れたらハンドルを少し揺らし、コーヒー粉の表面を平らにします。
お湯を注いで蒸らす
事前準備として、サーバーに一度お湯を入れて捨て、温めておきましょう。こうすることで、淹れたコーヒーの温度低下を防ぎます。
続いて、いきなりコーヒーを淹れるためにお湯を注ぐのではなく、まずはコーヒーの粉を蒸らすためにお湯を注ぎます。コーヒーは、酸味や苦味の種類によって粉の中心から外側へ成分が移動する速度が違うので、ゆっくり全体を蒸らして浸透率を均一にします。蒸らす時間は30秒前後です。
お湯の温度は90℃くらいが適しているので、沸騰後すぐではなく少し冷ましてから使います。湯温が測定できると便利ですよ。
コーヒーを淹れる
蒸らしの時間を終えたら、コーヒーを抽出するためにお湯を注ぎます。
中心から「の」の字をかくようにゆっくりと淹れます。これもまた、成分がまんべんなく抽出するようにするためです。3~5回程度にわけ同じペースでお湯を注ぎます。コーヒー粉が膨らみ、きらきらと光るように泡ができます。泡の山が消えてしまわないうちに次のお湯を注ぐのがポイントですよ。淹れ終わった後も表面に泡が残れば、上手にドリップできた証拠です。
カップに注ぐ
適量がサーバーに溜まったら、コーヒーを淹れるのは終了です。抽出されたコーヒーは下の方が濃く上の方が薄い状態ですので、軽く揺すりったりスプーンで混ぜたりして全体の濃度を整えましょう。最後にカップに注ぎます。
コーヒーを美味しく飲むために、サーバーと同じでカップを予め温めておくと、コーヒーが冷めにくくより美味しく飲めますよ。
4.ネルドリップで至高のコーヒータイムを
ほかの淹れ方に比べて、お手入れに少し手間がかかるネルドリップ。その分アイテムにも愛着がわき、コーヒーを淹れる前後の作業から丁寧に大事にコーヒーに向き合えます。そうして時間と手間をかけたコーヒーの味は格別。お手入れ方法や淹れ方のポイントをしっかり抑えて、ネルドリップだからこその至高の味を堪能してくださいね。