創業50年 直火式焙煎で挑む
北海道コーヒーの未来創り
株式会社 可否茶館品質管理部 中西拓海
北海道における自家焙煎コーヒーの草分けとして1971年に札幌で創業した可否茶館。芳醇な香味を生み出す直火式焙煎にこだわり、半世紀以上にわたり本物の美味しさを届けるべく尽くしてきた。次の50年へ、北海道コーヒーの未来の一端を担う、品質管理部・中西拓海氏に話をうかがった。
自家焙煎は、北海道の人々に本物の味を届けるための選択
北緯43度。コーヒー文化が育まれたヨーロッパと緯度を同じくする北の大地・札幌で、可否茶館の歴史は始まった。1971年、創業者・滝沢信夫氏はそれまで営んでいた広告業のさなかに東京や横浜で出会った自家焙煎コーヒーに感銘を受け、この道へ転身。生まれ故郷である北海道の人々に本当のコーヒーの美味しさを伝えるべく、カウンターのみを備えた小さな喫茶店を構え歩み出したという。
2021年に同社が創業50周年を迎えた際、滝沢氏は次のような言葉を残している。「納得がいくコーヒーをお客様に届けるためには、自分たちで豆を焼くしかなかった」—— 。今でこそ、北海道の自家焙煎コーヒーの草分けとして広く道民に愛される可否茶館だが、当時はまだ確かな焙煎技術すら確立されていない時代。自身で焙煎機を造るところから手探りでコーヒー豆を焼き始めたというエピソードに、コーヒーに懸けた彼の魂の強さがうかがい知れる。
直火式焙煎とアフターミックスで生み出す、複雑で奥深いブレンド
なかでも、可否茶館の代名詞となっているのが直火式による焙煎だ。火の熱がダイレクトに生豆に伝わる直火式焙煎は、自在な火力調整によって繊細な焙煎が可能である一方で、非常に高い技術が必要とされる。それでも、「直火式でしか出せない香味やまろやかなボディ、口当たりの厚みがある」と語るのは、品質管理部の中西拓海氏。現在、ほかの3人の焙煎士とともに同社で扱うすべてのコーヒー豆の焙煎を担うひとりだ。
可否茶館が目指すのは、「飲み飽きない日常に寄り添えるコーヒー」。富士珈機社製の10kg機と東京産機工業社製の30kg機の2台の直火式焙煎機を使用し、北海道ならではの中深煎りを軸に、常時約20種類ほどの焙煎豆をラインナップする。それぞれの生豆に適した焙煎を施した後にアフターミックスすることで、奥深い味わいに仕上げるのも同社のこだわりだ。
北海道コーヒーの未来を懸けた
50周年記念ブレンド作り
好きが高じてコーヒーの世界へ。アルバイトから叩き上げで技術者へ
2015年にアルバイトとして可否茶館に入社した中西氏は、店長、喫茶店舗の責任者と着実にステップアップを重ね、同社の味作りの根幹となる生産現場へとキャリアを進めてきた。まさに叩き上げといって良いだろう。高校生の頃からコーヒーに携わる職に憧れていたというその情熱は尽きることなく、焙煎や仕入れ、さらにはコーヒーの栽培など、より深い技術や知識を得たいと自ら品質管理の仕事を志望したという。J.C.Q.A.コーヒーインストラクター1級の資格を取得し、現在は生豆の選定からサンプリングなどの仕入れ業務を一任されるほか、味や外装といった出来上がった商品の品質チェック、製造計画の策定、商品開発なども行っている。
可否茶館の歴史と技術を凝縮して作り上げた、次世代で愛される新ブレンド
創業50周年を迎えた際、中西氏は社を挙げた一大プロジェクトを託された。記念ブレンドの開発だ。それは、今までの50年の歴史を次の50年につないでいくためのまさに新たな「日常に寄り添えるコーヒー」作り。可否茶館の未来を担う商品だ。
「とにかく、“可否茶館が作る意味”がある商品にしたかった」と、中西氏は当時を振り返る。ベースにしたのは、同社の指定契約農園であるコスタリカ・カンデリージャ農園で栽培された生豆。自分たちが自信を持って美味しいと届けられる生豆を徹底して探すなかで出会い、信頼を寄せる生産者だという。そこに、同じく長年関係性を築いてきたブラジル・カショエイラ農園、さらには同社が力を入れるインドネシア産のマンデリンなどをブレンド。これまでのお客様はもちろん、子、孫世代にも親しんでもらえるバランスの取れた味を目指し、焙煎度や配合の調整を何度も重ねた。
20以上の試作品と1年半の年月を経てようやく完成した『【50周年最初の一滴】50thブレンド』は、北海道コーヒーらしい中深煎りのコクと苦味のなかにやわらかな果実味と甘みを感じる味わいだと、中西氏は自信を見せる。「お客様から『毎日飲みたい味』と感想をいただいた時の感動はひとしおでした。受け入れていただけたかなと嬉しく思っています。これからは生産者ともお客様ともよりパイプを太くし、ぜひ北海道外のお客様にも飲んでいただける機会を作っていきたい」。
中深煎り文化の継承と時代変化への対応。両輪で挑む北海道コーヒーの未来
半世紀以上にわたり、実直にコーヒーと向き合ってきた可否茶館。さらなる50年に向けて今、新たな挑戦に乗り出している。掲げたメッセージは「育てよう北海道珈琲の Mirai」だ。
近年、スペシャルティコーヒーが広がりを見せ、味わい、楽しみ方、そこに求める価値は大きく変化した。さらに、家族のかたちや生活様式も多様化。さまざまな“日常”が生まれるなかで、ひとりひとりの「日常に寄り添えるコーヒー」であるためには、これまでの中深煎り文化にくわえ、浅煎りやストレートなどより時代に合った北海道コーヒーの創造が不可欠だという。
可否茶館が培ってきた直火式焙煎を、中深煎り文化と新たなコーヒー文化の両方に取り入れ両輪で走り始めた時、どんな北海道コーヒーの未来を創造してくれるのか。実に楽しみだ。
Product商品詳細
株式会社 可否茶館【50周年最初の一滴】50thブレンドドリップカフェ5P
- 価格は取材時点のものになります
可否茶館創業50周年を記念し、次時代の顔となる味として作られたブレンド。コスタリカの契約農園のコーヒー豆をベースに、ブラジル、インドネシア産のコーヒー豆を配合し、北海道コーヒーらしい中深煎りの奥深い苦みとともに、やわらかな果実味と甘みを感じる味わい。
Company会社情報
会社名 | 株式会社 可否茶館 |
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住所 | 064-0804 北海道札幌市中央区南4条西9丁目1006-12 第一栄輪ビル6F |
電話 | 011-252-7622 |
FAX | 011-252-7628 |
営業時間 | 9:00〜17:45 |
定休日 | 土、日、祝日 |
HP | https://www.kahisakan.jp/ |