有限会社 村上珈琲代表取締役 社長 村上博栄

埼玉県上尾駅から車で12分。村上珈琲は2002年、当時24歳だった村上博栄氏が開業した自家焙煎コーヒー店だ。

村上氏は大学時代、地元埼玉のコーヒー店「珈琲問屋 豆図鑑」で購入したコーヒーに衝撃を受け、アルバイトとして同店に入店。大学卒業後も同店で勤務を続けながら販売や焙煎にたずさわる一方で、開業の道を模索していた。「中古でいい焙煎機が見つかったら独立しよう」と考えていた頃、同店の師匠的存在である遠山珈琲の社長・遠山克利氏に出会う。村上氏の熱意に心を動かされた遠山氏は、焙煎機を斡旋、村上氏は開業に至った。

「コーヒーはきりがないから面白い」と話す村上氏。より理解を深めるために世界各地の農園を訪問し、栽培状態や精選、選別などを見て学んだ。コーヒーが作られる工程は国や産地によって大きく異なり、足を運んだからこそ得られることも多い。村上氏は今でも可能な限り産地を訪れているという。

現地で学んだ知見を生かし、村上氏はコーヒーの資格検定も取得。J.C.Q.A.認定コーヒーインストラクター1級・2級、生豆鑑定マスター、商品設計マスター、コーヒーインストラクター講師などの試験に合格し、あと1教科でJ.C.Q.A.認定鑑定士の資格を得るところまできている。資格検定の取得は、顧客へ正しい知識を伝えるためにも役立っているという。

メインで焙煎を行うのは、創業時から使用しているラッキーコーヒーマシンの半熱風式焙煎機だ。「自分の作るコーヒーの味わいが好き」と話す村上氏の焙煎へのこだわりは、それぞれの生豆がもつ味の特徴を生かすことと、すっきりした後味に仕上げること。前職での経験も含め、通算500トン以上もの生豆を焙煎してきた村上氏。中煎りでも20分ほどの時間をかけ、じっくりと焼き上げている。焙煎はコンピューターを使わず、テストスプーンで取り出した生豆の色や香りを確認し、ハゼる音を聞きながら時間を調整している。