日本橋と軽井沢で培われた
日本人の嗜好に合わせた味づくり
株式会社 ミカド珈琲商会株式会社 ミカド珈琲商会
コーヒーロースターとして東京・日本橋で創業し、後に出店した軽井沢でコーヒー文化を切り開いたミカド珈琲商会。70年以上にわたって愛され続ける同社のコーヒーづくりの原点を探るべく、日本橋室町三井タワーの新店舗で、代表取締役社長 鳴島佳津子氏に話をうかがった。
日本橋と軽井沢、 2つの街を代表するコーヒーブランド
ミカド珈琲商会の始まりは1948年に遡る。戦前、輸入食品店に勤務していた創業者の金坂景助氏は「近いうちに多くの日本人がコーヒーを楽しむ時代になる」と考え、コーヒー豆の焙煎と卸売の会社を立ち上げた。東京・日本橋を創業の地に選んだのは、「商売をするなら日本橋」という、この街の砂糖問屋で育った母の言葉を思い出したからだ。
その後ヨーロッパ式のスタンドスタイルでコーヒーの提供を始めると、短時間で美味しいコーヒーが飲めるという理由から、日本橋界隈で働くビジネスマンの心を掴んだ。また、当時は夏になると日本橋店のお客様方がこぞって軽井沢の別荘へ行く時代だった。「軽井沢でもミカドのコーヒーが飲みたい」。そんな声に応えるべく、1952年に軽井沢にも出店。以来、日本橋と軽井沢それぞれの街で親しまれている。
グルメな軽井沢のお客様が満足するコーヒーとモカソフト
現在、代表取締役社長を務めるのは、金坂氏の娘、鳴島佳津子氏。同社が広く愛されている原点は、創業以来追い求めてきた「日本人の口に合うコーヒーにある」と鳴島氏は語る。「日本食はおみおつけ(お味噌汁)の文化です。ヨーロッパのように、こってりした料理を食べてエスプレッソを飲む食文化とは根本的に違います。素材の持ち味を大切にし、繊細な酸味やふくよかな香りを楽しむ。そんな日本人が飲んで、美味しいと思うコーヒーがあると思っています」。
その味を実現するにあたり、舌の肥えた軽井沢のお客様の存在は大きく、彼らに満足してもらう味を作るため試行錯誤を重ねてきたという。実は、同社を代表する商品の一つ、「ミカド珈琲のモカソフト(R)」も、軽井沢のお客様がきっかけで誕生。店を訪れる家族連れを見た先代が「子供も楽しめるメニューが必要」と、開発に踏み切った。モカソフトは誕生から50年を迎え、老若男女に愛される軽井沢の名物スイーツとして親しまれ続けている。
生産者と顔の見える付き合いをすることが、良いコーヒーづくりの秘訣
現在、約50のコーヒー商品を持つ同社が仕入れる生豆は約100種類。なかでも45年にわたり専属契約を交わしているのが、メキシコのコアテペックエリアにあるサン・アルフォンス農園だ。「『美味しいコーヒーを、できるだけリーズナブルに』。それが、先代の口癖でした」と、鳴島氏。非常に高価なブルーマウンテンと同等の質のいい生豆を求めて、金坂氏がたどり着いたのがメキシコだったという。
「長年の取引をするためには、人と人との信頼関係が何より大切」。そう語る鳴島氏も2年に一度は現地へ赴き、生産者やその家族たちと顔を合わせている。「我々は彼らを信頼し、いい生豆を求めます。それが伝わっているからこそ 『ミカドのために、美味しいコーヒーを育てよう』と思ってくれるのです」。
日本人がつくるコーヒーの味を
世界の方々へお伝えしたいです
日本人好みの味に欠かせない、持続する香りと甘い酸味
そうして仕入れた生豆は全て、埼玉県にある自社工場で焙煎している。主に使うのは、120キロ釜の東京産機、半熱風式焙煎機だ。約15分かけてじっくりと熱を与えながら、生豆の膨らみや色を何度も確認し、最後は音を聞き分けて火から下ろすタイミングを判断する。半熱風式にこだわる理由は、香りや旨味が持続するからだという。インパクトのある強い香りが瞬間的に立つことよりも、深みのある香りがじわじわと楽しめること。それは同社が追い求める、日本人の口に合うコーヒーの要素のひとつだ。
また、コーヒー果実が本来持つ甘酸っぱさを引き出すことも不可欠だという。「お寿司や酢の物に親しみのある日本人は、穏やかな酸味があることで、旨味や軽やかな後味を楽しむ傾向があります。ですから、コーヒーにもほのかに上質な酸味が必要だと考えています」。
日本のコーヒーを次の世代、そして世界へ
「コーヒーは、知れば知るほど世界が広がる飲み物です」と語る鳴島氏。今度はその味を、新たな世代と世界に向けて発信しようとしている。2019年6月には、初のオフィスビル内の店舗となる日本橋室町三井タワー店をオープン 。従来のクラシカルなイメージとは違う、新しい感覚でミカドコーヒーを楽しんでほしいという思いを込めた。しかしその根底にあるのは、創業当初と同じ、日本橋で働く人にとっての幸せの一杯。70年以上にわたり愛され続けてきた味が、次世代、そして世界の人々に愛されるよう、未来への準備を着々と進めている。
Product商品詳細
株式会社 ミカド珈琲商会日本橋ぶれんど
(100g)1,200円(税込)
- 価格は取材時点のものになります
コロンビアのコーヒー豆をベースに、苦味・甘味・酸味のバランスを重視した、創業以来のブレンド。日本人が美味しいと感じる、持続する豊かな香りと軽やかな酸味が特徴。この商品は社章でもある「生産国からコーヒーの実が日本へ運ばれ、ローストされカップ一杯のコーヒーになるまで」の図柄を使用している。
Company会社情報
会社名 | 株式会社 ミカド珈琲商会 |
---|---|
住所 | 108-0073 東京都港区三田2-21-8 |
電話 | 03-3453-9016 |
FAX | 03-3453-9456 |
営業時間 | 9:00〜17:30 |
定休日 | 土、日、祝日 |
HP | https://mikado-coffee.com/ |