コーヒー卸売業から一念発起
地元に根ざしたコーヒー店へ
有限会社 大洋食品代表取締役 百瀬久蔵
1959年に東京・新小岩で創業した大洋食品。卸を主業としていた時期を経て、3年前より始めた取り組みで、地元に根ざしたコーヒー店へと大きく舵をきった。その理由を探るべく、2代目社長の百瀬久蔵氏に話をうかがった。
コーヒーの主たる卸先はお茶屋
大洋食品の始まりは1959年、創業者の百瀬嘉昭氏が炭の行商や代用コーヒーの卸を始めたことに遡る。創業翌年には焙煎機を購入し、自家焙煎をスタート。当時、お茶屋が繁盛していたことに目をつけた先代は、「これからはお茶だけでなくコーヒーも飲まれる時代になります。お茶と一緒にコーヒーを販売すれば、売り上げもきっと上がります」と、お茶屋の店主に営業。この大胆な卸先の開拓が軌道にのり、同社はのちに量販店、喫茶店へもコーヒー豆の販路を広げていった。
卸から小売へ、新たな販路を開拓
主要取引先のお茶屋から店頭での小売販売という新たな販路の開拓に踏み切ったのは、2代目を継ぐ久蔵氏。そのきっかけとなったのは、先代の時代から事務所で行なっていた年末の小売セールだ。
卸の場合、コーヒー豆の情報を添えて取引先に納品しても、その先のお客様にどれくらい伝わっているのか分からず、もどかしさを感じることが度々あった。しかし、店頭での対面販売では、お客様にコーヒーの風味特性や産地といったストーリーを自分の言葉で伝えることができる。また、お客様が再来店した時に「美味しかった」と感想をもらえることに、これまで以上のやりがいを感じたという。お客様とのコミュニケーションは久蔵氏にとって大きな励みとなり、同社は3年前から事務所での小売を本格的にスタートした。
試飲サービスを行い、店舗の認知を拡大
事務所の1階で小売をするにあたり久蔵氏はさまざまな施策を練った。例えば、毎月末に3日間、通行者に向けたコーヒーの試飲サービスを実施。また、外から見れば何のお店か分からない状態だった扉をガラス張りに変え、中が見えるようにして、コーヒー関連のビジュアルも掲示。さらにブレンドを作る事務所1階に換気扇を設置し、道路に向けてコーヒーの香りが漂うように工夫した。
すると、徐々に月末以外でもお客様が訪れるようになり、特売日のお知らせハガキを出すと、なんと7割の方がハガキ持参で事務所に足を運んでくれるようになった。ほぼ卸が主体だった売り上げも、現在は小売が2割超え。だんだんと街のコーヒー店として溶け込んできたと実感しているという。
お客様と顔を合わせて話すなかで
新たな商品アイデアも生まれる
焙煎業者との密なパートナーシップで作られる味
同社は1970年代の排煙規制により自家焙煎ができなくなってからは、群馬県高崎市にあるシーアンドシーに焙煎を委託。焙煎されたコーヒー豆が同社に届くとミキサーを使い、昔から守っている独自の配合でブレンドを作っている。
生豆の仕入れを行なっているのは、久蔵氏自身。同じ産地の生豆を仕入れたとしても、同じ味のものが入ってくるわけではないので、それぞれの生豆の焙煎具合をシーアンドシーに細かく注文している。数ある焙煎業者のなかでも、シーアンドシーを選んだのは、「要望を細かくヒアリングし、コミュニケーションが丁寧なところに信頼を置けるから」と久蔵氏。気になるところがあればすぐに工場長に電話し、久蔵氏自身も車で工場へ駆けつけて、直接要望を伝えるなど密なコミュニケーションをとっている。
地元に根ざしたコーヒー店になるための更なる挑戦
今後の目標を聞くと、「コーヒーは嗜好品ですから個人によって好みの味があります。今は一人一人のお客様に合ったコーヒーを作りたいと思っています」と久蔵氏。小ロットの焙煎機を導入し、お客様のご要望に合わせて生豆を焙煎するフルオーダー式の自家焙煎店を実現したいと考えている。「焙煎機が店内に設置されている店は、本格派のコーヒー店だと認知されやすい、と聞いたことがあります。だからこそ視覚的にも訴えかけるようなビジュアル重視の美しい焙煎機を導入したいです」と話す。コーヒーを通してお客様のご要望を細やかに叶える、地元に根ざした店へ。大洋食品の挑戦はこれからも続いていく。
Product商品詳細
有限会社 大洋食品マイルドブレンド
(400g)830円(税込)
- 価格は取材時点のものになります
店頭試飲で振る舞っている大洋食品の看板商品。やわらかい味わいのブラジル・サントス、グアテマラ、コロンビアを中心に飲みやすいマイルドなブレンドに仕上げている。名前の由来は風味のマイルドさにくわえ、創業者が愛飲していたタバコのネーミングからもインスパイアされているとのこと。
Company会社情報
会社名 | 有限会社 大洋食品 |
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住所 | 124-0024 東京都葛飾区新小岩1-22-4 |
電話 | 03-3651-1260 |
FAX | 03-3651-6261 |
営業時間 | 9:00〜18:00 |
定休日 | 祝、第2・3土曜日 |
HP | https://taiyo-food.co.jp/ |