昭和の喫茶文化と世界基準のコーヒーを知る
コーヒーのハイブリッドカンパニー
株式会社 トーアコーヒー製品開発・促進担当 小竹秀一
東京・大久保の線路沿いからひとつ入った路地に、昭和の面影を残す焙煎豆の直売所、トーアコーヒーがある。スペシャルティコーヒーの最高峰、「カップオブエクセレンス(COE)」を日本で初めて落札した同社で現在、品質管理を一手に担う小竹秀一氏をインタビューした。
社名に込められた創業期からのグローバルな視点
創業者の浅野孝介氏は1954年にトーアコーヒーを開業。社名の「トーア」は「東亜」に由来し、経済の中心はこれから東アジアになるであろう、というグローバルな視点が込められている。
1966年、日本が高度成長期に突入し喫茶店ブームを迎えるなか、同社は有楽町に直営の第一号店をオープン。当時、喫茶店の主力商品はコーヒーではなくジュース類だったことから、コーヒーをメインとしたメニューを次々と開発。バニラアイスとコーヒーをシェイクし、生クリームをトッピングした「カフェクイーン」など、従来の喫茶店にはない独自のコーヒーメニューを導入していった。
そのなかで、生産国別にストレートコーヒーを提供し始めたところ、「今日はハワイに行ってみようかな」と、お客様が生産国に想いを馳せながら選ぶようになり、人気メニューへと昇格。この成功体験が後に、同社のスペシャルティコーヒーに関わる足がかりとなっていく。
日本で初めてCOE認定豆を落札
創業者の特筆すべきところは、「社史の随所にコーヒーの最新情勢を見据え、グローバルな視点があること」と小竹氏は語る。1960年代には中南米の農園視察を開始し、消費国であるアメリカやヨーロッパにも訪れている。
また、同社は日本にスペシャルティコーヒーが本格上陸する2000年代に先駆けて、1999年に「国連(ITC)グルメコーヒー開発可能プロジェクト」に参画。日本のスペシャルティコーヒーのテストマーケティング企業に選ばれている。
創業者はブルンジ産のスペシャルティコーヒーをテスト焙煎した時、素晴らしい香りに驚き、扱う生豆をスペシャルティコーヒーに切り替えることを即決。翌2000年には、コーヒー豆の国際品評会と言われる「COE」を主催する「Alliance for Coffee Excellence, Inc.(ACE)」の永久会員となり、日本のコーヒー企業として初めて「COE」認定のコーヒー豆を落札した。
“すべての生豆は現地に足を運び、
COE基準でカッピングして買い付けします”
カッピングで選んだ最高の生豆をダイレクトに調達
現在トーアコーヒーの生豆の買い付けを担当しているのが小竹秀一氏。小竹氏は扱うすべての生豆の農園を訪れ、COE基準のカッピングフォームで評価した上で、買い付けを決めるという。「実際に土を見て、完熟したコーヒーチェリーを口にしてみたいじゃないですか」といたずらっぽく話す小竹氏だが、その確かな実力と経験を買われ、COE国際審査員として複数の生産国審査会にも招聘されている。
小竹氏が求めるコーヒーには3つの条件がある。味が綺麗で(クリーンカップ)、酸味の質が良く、液体に独自の風味(フレーバー)がある。これはそのままスペシャルティコーヒーの定義にも当てはまる。
トーアコーヒーでは品質に自信があるからこそ、抽出器具にフレンチプレスを推奨している。フレンチプレスは油分や微粉がそのまま抽出されるため雑味も出やすいが、実際に試飲してみるとクリーンな味わいと、まろやかな口あたりが心地良い。「飲み終わったカップの底に残った微粉に砂糖をくわえて飲んでみてください」。そう勧められ、スプーンですくって口に入れると、まるでチョコレートのような上質な酸味とコクが感じられた。
COE認定豆の風味を引き出す、熱風式焙煎機
同社は埼玉県の工場と東京本社で4つの焙煎機を所有。なかでもCOE認定豆についてはイタリア製ペトロンチーニで完全熱風焙煎をしている。この焙煎釜の特筆すべき点は、ドラムの素材にレアメタルを使っていること。熱伝導が優れているレアメタルを使用することで、火力の上げ下げがしやすくなるのだ。それは焙煎豆の焼けムラを防ぎ、クリアな味を作ることにも繋がっている。
「コーヒーの2050年問題」にも向き合う
創業から続くグローバルな視点は、今なお健在だ。同社は、気候変動によってアラビカ種のコーヒー栽培適地が現在の50%にまで減少すると予測されている「コーヒーの2050年問題」にもいち早く取り組み、日本のコーヒー会社として初の国際研究機関「ワールド・コーヒー・リサーチ」の寄付企業として名を連ねている。
コーヒーの美味しさをとことん追求しながら、世界のコーヒー情勢にも目を向け、寄与しているトーアコーヒー。そこには社是である「信用・協力・誠実」を行動で示す小竹氏と同社の姿勢が見えた。
Product商品詳細
株式会社 トーアコーヒーキングアーサーブレンド 深煎り
(200g)864円(税込)
- 価格は取材時点のものになります
すっきりとした後味と深みのあるコク、スパイシーな甘い香り。深煎りのなかでも最もテロアールを引き出したブレンド。名前の由来は、創業者の浅野氏がブラジルの農園主に「アーサー」とニックネームで呼ばれていたことからきているとのこと。
Company会社情報
会社名 | 株式会社 トーアコーヒー |
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住所 | 169-0073 東京都新宿区百人町1-23-13 |
電話 | 03-3363-7671 |
FAX | 03-3363-1476 |
営業時間 | 8:40〜17:40(平日) |
定休日 | 土、日、祝日 |
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HP | http://www.toa-coffee.co.jp/ |