慣れ親しんだ味を守りながら
質の高いコーヒーを広める
株式会社 東北萬国社業務部コーヒー課課長 赤塚宏之
萬国珈琲を手がける東北萬国社は、創業60年を迎える老舗コーヒー会社だ。長年ホテルやレストランに良質なコーヒー豆を提供し、3店の直営店を運営。創業以来、東北のコーヒー文化の成長とともに歩んできた。山形の人々が好む穏やかなコーヒーの味を継承しつつ、新しいコーヒー文化やトレンドも積極的に取り入れる同社の焙煎士、赤塚宏之氏に話をうかがった。
創業60年、山形最大手のコーヒーブランドへ成長
東北萬国社はもともと、仙台を拠点とした前身のコーヒー業者が、山形県に新たな営業所を開設したことに始まる。同営業所の所長に就任した本郷富也氏は一家で仙台から移住。のちに、元のコーヒー事業を引き継ぐかたちで1960年に東北萬国社を創業した。当時、山形ではコーヒーが普及していなかったため、ソフトクリームの販売とあわせてホテルや喫茶店へコーヒー豆の卸を行い、地元最大手のコーヒー業者として成長を遂げた。
現在、同社は萬国珈琲のブランドで業務用コーヒー豆の卸を行う一方、東北エリアで直営カフェを3店運営している。2018年からはシングルオリジンを含めたスペシャルティコーヒーの提供を開始。夏にはクリーミーな泡立ちが楽しめるドラフトコーヒーも販売するなど、最新のコーヒートレンドも取り入れている。
創業時から受け継ぐ、穏やかで飲みやすい味わい
「萬国珈琲にとって美味しいコーヒーとは、穏やかで飲みやすいコーヒーです」と語るのは、業務部コーヒー課課長の赤塚宏之氏。本社がある山形の内陸部では、何杯もお代わりできるような穏やかで角がないコーヒーが特に人気だ。山形の風土を表すような飲みやすいコーヒーは、創業時から大切に受け継いできた味でもある。
同社では、現在15カ国35種類の生豆を仕入れている。コストが許す限り一般普及品よりもワンランク上のものを扱うのがポリシー。コーヒーは農産物なので時期によって仕入れる生豆の産地や品種が変わるが、それでも代表的なオリジナルブレンドの味は変わらないように、赤塚氏は毎朝の日課として、現会長とともにコーヒーを飲んで味を確認しているという。
熱風・半熱風・直火式焙煎機を使い分けて焙煎
萬国珈琲のコーヒー豆はすべて自社焙煎。本社併設の焙煎所でほぼ毎日焙煎しており、その量は月3トンになる。主に使用している焙煎機は3台。1988年から使用している60キロの半熱風式ラッキーコーヒーマシンは業務用のメイン機種として、萬国珈琲ならではの穏やかな味を表現するときに活躍。8キロの直火式ラッキーコーヒーマシンは、炭火を熱源としており、炭火焼コーヒーを作る際に使用。さらに2018年に導入した35キロの熱風式スマートロースターは萬国珈琲のオリジナルブレンドを焙煎するときに使用している。スマートロースターは、標高の高い地域で育った、実の締まった硬い生豆でも焦げにくく、生豆の個性を引き出すことに長けているという。また焙煎したコーヒー豆は、お客様の手元に届いた頃にちょうどいい味になるように、焙煎後すぐに出荷している。
美味しいコーヒーを探す
それもコーヒーの醍醐味のひとつ
人気のコーヒー教室は1700人の生徒を輩出
カフェや喫茶店より、自宅でコーヒーを楽しむ習慣があるという同県。そのため、近年はコーヒーを美味しく淹れることへの関心がさらに高まり、コーヒー教室が人気だという。
萬国珈琲では東北初となるコーヒー教室を40年前から開催し、これまでに1700名の生徒を輩出。教室ではコーヒーについての基本知識を教えるとともに、「これだけを正解にするのではなく、ここから自分の美味しいコーヒーを見つけてください」と説くという。それは「美味しいコーヒーを自分で見つけることも、コーヒーの楽しさの一つ」という考えからだ。
17年経っても焙煎はまだまだ面白い
同社の主任焙煎士を務める赤塚氏は学生時代から大のコーヒー好きで、「コーヒーの仕事に関わりたい」と1993年に入社。営業職を経て焙煎担当者に就任し17年目を迎えた。「17年経っても焙煎はまだまだ面白い。自分は100点だと思う焙煎でも、他の人から見るとそうではなかったりしますから」と楽しそうに語る。
今後の目標を聞くと、「お客様ご自身が本当に美味しいと思えるものでないと、コーヒー文化は広がっていきません。だから、一人一人が美味しいと思えるコーヒー、そしてクオリティの高いコーヒーをこれからも広めていきたいですね」と赤塚氏。
先人から引き継いできた味を守りながら、若い世代に向けて、新たなブレンド開発やスペシャルティコーヒーなどの上質なコーヒーの普及に尽力している同社。山形のコーヒー文化の未来に、大きな期待が膨らんだ。
Product商品詳細
株式会社 東北萬国社季節のブレンド 夏ブレンド せせらぎ
(100g)432円(税込)
- 価格は取材時点のものになります
夏には清涼感ある爽やかさを、秋には紅葉のような華やかさを。「コーヒーから季節を感じられる」をコンセプトにした萬国珈琲を代表する商品。2019年にリニューアルした「夏ブレンド せせらぎ」は、ホットでもアイスでも飲みやすい中煎〜中深煎。季節のブレンドは、その年に収穫、仕入れた生豆によって、毎年、配合を調整している。
Company会社情報
会社名 | 株式会社 東北萬国社 |
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住所 | 990-0073 山形県山形市大野目3-6-23 |
電話 | 023-631-6665 |
FAX | 023-631-6670 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
定休日 | 土、日、祝日 |
HP | https://www.bankoku-coffee.com/ |