先見の明でブラジルへ
コーヒーの品質管理を徹底
山下コーヒー 株式会社代表取締役社長 山下雅彦
大正時代から業務用コーヒーを卸している山下コーヒー。品質を厳しくチェックし、 製品によって焙煎機を使い分けて作るコーヒーは、数々の喫茶店や小売店の店主から支持されている。今回は代表取締役社長の山下雅彦氏に同社のこだわりを聞いた。
ハワイの食文化に触れ、先取りしたコーヒーのある生活
山下コーヒーのルーツは意外にもハワイにある。初代社長の山下義久氏は1914年、父・兄弟とともにハワイに移住し、15歳〜20歳の多感な時期を過ごした。日本では手に入りにくい卵や肉、砂糖が普及しており、パンやコーヒーも日常的なもの。義久氏はその食文化に日本とのギャップを感じたという。
しかし一時帰国した1919年、義久氏が目の当たりにしたのは、食文化が徐々に洋風化してきている日本の姿だった。「これからは日本でもコーヒーが飲まれるようになる」と確信した義久氏は1925年に前身となる山下コーヒー商会を創業。現在の山下コーヒーの基盤となる業務用コーヒーの製造を始めた。
コーヒー鑑定士の資格を取るため渡伯
コーヒーの卸を始めて95年になる山下コーヒー。長い取引先のなかには、渋谷の「茶亭 羽當」といった人気店も名を連ねている。こだわりが強い店に支持されている理由は、一癖も二癖もある店主たちが納得する、質の高いコーヒー豆を提供し続けていることだ。
コーヒーの検査手法が確立されていなかった1970年代後半、現在社長を務める雅彦氏はコーヒーの品質の重要性にいち早く気づいた日本人のひとり。雅彦氏は大学卒業後、ブラジル農務省傘下にあるInstituto Brasileiro Do Cafe(ブラジルコーヒー院)主宰の学校へ留学。コーヒー鑑定士の資格取得を目指して勉強を重ねた。ポルトガル語での授業と試験という高いハードルを見事に突破し、ついには日本人合格者がたった9名しかいないという、ブラジル政府公認のコーヒー鑑定士資格を取得した。
生豆の品質をチェックし
焙煎で素材の持ち味を引き出す
原料の品質検査を導入
帰国した雅彦氏は、山下コーヒーにカッピングによる品質検査を導入。現在はJ.C.Q.A.認定生豆鑑定マスターやJ.C.Q.A.認定コーヒーインストラクター1級、ブラジル商工会議所認定コーヒー鑑定士の資格取得者が検査している。
イタリアの熱風式焙煎機と日本の炭火焙煎機を併用
山下コーヒーでは生豆の個性や卸先からの要望にあわせて、大きく2種の焙煎機を使い分けている。ひとつはイタリア・ヴィットリア社の熱風式焙煎機。もうひとつは、富士珈琲機械製作所と共同開発した炭火焙煎機だ。
ヴィットリア社の熱風式焙煎機は背の高い2段構造になっており、1台分のスペースで2台分の生豆を同時に焼くことができる。卸を生業としている同社にとっては、大量の生豆を毎回同じクオリティで焙煎できてこそ、はじめて商品化ができる。この焙煎機はプロファイリングされたデータによって、温度を1秒1℃単位で設定。再現性の高い焙煎ができるのが最大の特徴だ。
一方、炭火焙煎機は喫茶店などで提供される炭火焙煎コーヒーを作っている。燃焼する時に水分が発生しない炭火焙煎は、生豆をふっくらと焼き上げ、芳ばしい香りがコーヒー豆に移る。加工炭や外国産の備長炭など安い炭もある中、同社の炭火焙煎は熱源に和歌山県産の紀州備長炭のみを使用しており、電気やガスなどの副熱源を一切持たない。そのため、毎回異なる炎の上がり方を見ながら、炭の量と風量を調整し焙煎しているという。
コーヒーを通じて心の充足を満たしたい
そうして作られたコーヒーをこまめに卸先へ届けていることも同社の特徴と言える。新宿エリアにあるという土地柄、そして「お客様に新鮮なコーヒーを届けたい」という想いはもちろん、コーヒー卸売業者としての枠を超えて、人と人との信頼関係がそうさせるのだという。
今や多くの人にとってコーヒーが生活の一部となった日本。時代は変わっても、創業当時より企業理念としている「コーヒーを通じて心の充足を満たす」という想いは変わらない。「美味しいコーヒーを飲んだ時の感動はメンタルをも癒す。そういうコーヒーを提供したい」と語る雅彦氏の横顔は、品質にこだわる卸売業者としてのプライドとお客様への愛情が感じられた。
Product商品詳細
山下コーヒー炭火焙煎ブレンド
(100g)648円(税込)
- 価格は取材時点のものになります
業務用コーヒーを主に製造している山下コーヒーが唯一直営している「皇琲亭」の炭火焙煎ブレンド。苦味、酸味、コクのバランスが良いのが特徴だ。100%紀州備長炭で焙煎しているため、炭火ならではの芳ばしい香りを堪能できる。
Company会社情報
会社名 | 山下コーヒー 株式会社 |
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住所 | 162-0853 東京都新宿区北山伏町1-15 |
電話 | 03-3268-2222 |
FAX | 03-3268-2260 |
営業時間 | 8:30〜17:30 |
定休日 | 土、日、祝日 |
HP | https://www.yamashita-coffee.com/ |